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「地球温暖化適応ビジネス」とは?

地球温暖化はもはや避けられず、むしろ被害を減らす「適応策」に新たなビジネスチャンスがある、という興味深い日経産業の記事を紹介します。

避けられない温暖化 「適応策」で新ビジネス
出所:日経産業 2014-10-16

  • 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今春まとめた報告は、温暖化対策が曲がり角にあることを指摘。地球の平均気温が2度以上上がると洪水や熱波、干ばつなどが多発し、台風も巨大化すると予測。一方で温暖化ガスの排出を減らす国際的な枠組みづくりは難航し、温暖化は回避できない状況になりつつある
  • 浮上してきたのが、温暖化の被害を最小限に抑える適応策。IPCCの報告は適応策の強化を強調、国レベルだけでなく民間が果たすべき役割も大きいと指摘
  • 適応ビジネスの先行例はすでにある。温暖化は損害をもたらす半面、一部でプラス効果も予想される。たとえば北極海航路。商船三井が北極海定期航路を開くと発表し話題になった。農業でも、これまで温暖な地域に限られていたミカンなどの栽培地域が東北地方まで広がると予想される。食品メーカーや商社などは生産地の変化を予測する研究に動き出している。
  • 期待されているのは、温暖化のプラス面を上手に活用するビジネスだけではない。
    • スイス・ネスレ:温暖化に対応したコーヒー豆生産技術の研究、農家の教育など(中国、西アフリカ、中南米、東南アジアなど)
    • コカ・コーラ:水使用量の削減と地域への安全な水供給(タイ、ベトナム)
    • 英蘭ユニリーバ:干ばつに強い紅茶の開発、水資源の確保など(ケニア、タンザニア)
    • 米マイクロソフト:情報技術を活用した温暖化の評価、監視、早期警報(全世界)
    • 独BASF:高温や干ばつに強い穀物の開発、農家の教育(ブラジルなど)
    • 米GE:工場・都市排水の有効活用(アルジェリア、中国、インド)
    • 独シーメンス:新たな水浄化技術の開発(当面はドイツ国内)
  • 国連の気候変動枠組み条約事務局は、適応ビジネスの事例を世界から集め、データベース「プライベート・セクター・イニシアチブ(PSI)」として公表、すでに100以上の事例が集まり、業種も食品、化学、情報通信、金融・保険など幅広い。
  • 興味深いのが、独化学大手BASF、同製薬・化学大手バイエル、コカ・コーラなどの事例。バイエルやBASFは高温や乾燥に強いダイズ、トウモロコシの品種改良・開発など、途上国の穀物生産を支援。協力内容も研究開発から人材育成まで幅広い。医薬・化学品の原材料として熱帯・亜熱帯の植物の重要性が増しており、長い目で事業の継続性を保つことが狙い。コカ・コーラも途上国の水資源確保に向けた事業を表明。安全な飲み水の確保は世界各地で深刻な問題になっているが、温暖化はそれに拍車をかけるため
  • 共通しているのは、温暖化で被害が予想される国との共生を訴えていること温暖化に便乗したビジネスという印象を地元や国際社会に与えてしまえば反発は免れない。一方で、企業の社会的責任を旗印に掲げるだけでは利益に結びつきにくい。その中間で新たなビジネスモデルを模索する動き。
  • PSIに登録した日本企業は、国内で水資源管理を進めるサントリーグループなど数社。水面下で海外事業を計画している企業は多いはずだが、世界にアピールする姿勢も必要